続・西洋絵画、どこから見るか?

国立西洋美術館 x サンディエゴ美術館 西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで

2025.05.07 11:00


「続」がついてるってことは
先日ご紹介した「」のつづきネ。

西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで

in 国立西洋美術館

さ、早速作品紹介いってみよう。

国立西洋美術館 x サンディエゴ美術館 西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで

《ダヴィデを装った若い男の肖像》
ヤコボ・ティントレット(1594)
国立西洋美術館蔵

ボクが愛用する
ジャブスアルキヴィオの
モデル名《ティントレット》の
名前の由来になった画家の絵ネ。

因みに奥に倒れてる男がゴリアテ。

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《聖カタリナの神秘の結婚》
パオロ・ヴェロゼーネ(1547)
国立西洋美術館蔵

聖カタリナとは「アレクサンドリアの聖カタリナ(4世紀の殉教者)」を指す。

美貌と知性を兼ね備えた貴族の娘で、異教の哲学者たちを論破し、信仰を貫いて殉教したとされる伝説的人物だ。

修道女の間で特に崇敬され、キリストとの「霊的婚姻」(魂の完全な一致)を象徴するエピソードが伝えられていてその象徴的シーンがこの絵に描かれている。

1. 聖カタリナが瞑想中、聖母マリアと幼子イエスが現れる。

2. 幼子イエスがカタリナの指に結婚指輪をはめ、彼女を「花嫁」として迎える。

この作品では結婚指輪をはめてないけど、この瞬間がカタリナの信仰と献身が完全に神に捧げられた証とされているのだ。

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《アレクサンドリアの聖カタリナの神秘の結婚》
フランクフルトの画家(1500-1510年頃)
サンディエゴ美術館蔵

コチラは指輪を持ってる!?

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《洗礼者ヨハネの首を持つサロメ》
ティツィアーノ・ヴェッチェリオと工房(1576)
国立西洋美術館蔵

新約聖書の『マタイによる福音書』と『マルコによる福音書』に基づくエピソードを題材にしたキリスト教絵画史でも特に衝撃的かつ象徴的なテーマのひとつ。

1. 洗礼者ヨハネ(バプテスマのヨハネ)は、ヘロデ・アンティパス(ユダヤの領主)の結婚を非難したことで投獄される。

2. ヘロデの妻ヘロディアは、ヨハネを憎んでいた。

3. ヘロデの誕生日、ヘロディアの娘サロメが宴席で踊り、ヘロデを大いに喜ばせる。

4. ヘロデは「何でも望むものを与える」と誓う。

5. サロメは母ヘロディアの指示で「洗礼者ヨハネの首を銀の皿に載せてください」と願う。

6. へロデは不本意ながらも約束を守り、ヨハネは斬首される。

なんとも痛ましい光景だ。

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《三連祭壇画:キリスト磔刑》
ヨース・ファン・クレーヴ(16世紀前半)
国立西洋美術館蔵

ゴルゴタの丘にて。

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《聖エングラティアの捕縛》
バルトロメ・ベルメホ(1501)
サンディエゴ美術館蔵

エングラティアはポルトガル・ブラガ出身の貴族の娘。

婚約者の元を訪ねてサラゴサに赴く途中、彼女はサラゴサでキリスト教徒の迫害を目にし、ローマ総督に対して激しく抗議を行う。

しかし、その抗議により彼女自身も捕縛されることになり、そのシーンが本作には描かれている。

その後、彼女は信仰を棄てるよう迫られるが、それを拒否したため、激しい拷問を受け、最後には殴打され、牢に放置されて殉教。

聖エングラティアとして彼女の殉教は称えられることに。

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《神の仔羊》
フランシスコ・デ・スルバラン(1635-1640年頃)
サンディエゴ美術館蔵

洗礼者ヨハネがイエス・キリストを
「世の罪を取り除く神の仔羊」と表現した
ヨハネによる福音書(ヨハネ1:29)に記録されている
キリストの称号を示唆していることに基づいた作品。

仔羊は犠牲の象徴であり
キリストの犠牲と重ね合わされているらしいが
果たして貴方にはこの仔羊がキリストに見えるかな?

因みにマドリードのプラド美術館にも
スルバン作の《神の仔羊》が所蔵されている。

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《マルメロ・キャベツ・メロンとキュウリのある静物》
フアン・サンチェス・コターン(1602)
サンディエゴ美術館蔵

展覧会ポスターにも使用されるほど
よく知られるフアン・サンチェス・コターンの静物画。

西欧でも日本でお馴染みの果物や野菜を食べてたのね。

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《十字架のキリスト》
エル・グレコ(1610-1614頃)
国立西洋美術館蔵

霊的なビジョンや
神秘体験を描こうとした画家
エル・グレコを代表する作品。

エル・グレコの同作品には
いくつかのヴァリアントがあり
マドリードのプラド美術館や
トレド大聖堂などに所蔵されている。

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《幼児キリストの勝利》
ファン・デ・メサ(1620)
サンディエゴ美術館蔵

ファン・デ・メサは
バロック彫刻の大家とされる
フアン・マルティネス・モンタニェスの弟子

作品の静かなら勝利を誇っている姿が印象的。

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《悔悛するマグダラのマリア》
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ(1660-1665)
サンディエゴ美術館蔵

イエス・キリストと出会い改心し
信仰に生きるようになった
マグダラのマリアを描いた作品。

この悔悛のシーンは
エル・グレコやティツィアーノなど
多くの画家に描かれているが
他の作品に比べマグダラのマリアの悔悛度は非常に高い。

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《悔悛するマグダラのマリア》
ジュリオ・チェザーレ・ブロッカチーニ(1620)
サンディエゴ美術館蔵

瞳に涙を貯めながらも強い意志を感じるマグダラのマリア。

先の作品とはまったく趣を変えている。

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《聖ドミニクス》
フランシスコ・デ・スルバラン(1626-1627)
国立西洋美術館蔵

13世紀に創設された
ドミニコ会修道院の創設者が
この肖像となる聖人ドミニクス。

ドミニクスの足元に見える
松明を咥える犬というモチーフは
母ヨハンナがドミニクスを妊娠中
口に燃えた松明を咥え、世界を駆け回る犬を見た夢に由来するとか。

但し、本作品では象徴ともいえる松明に火が見えない。

理由はより控えめで静謐な宗教性を強調しているのかもしれないとのこと。

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【右】《ゴリアテの首をもつダヴィデ》
グエルチーノ(1650)
国立西洋美術館蔵

【左】《ゴリアテの首をもつダヴィデ》
アントニオ・デ・ベリス(1642-1643)
サンディエゴ美術館蔵

ダヴィデはイスラエルの少年で後に王となる人物だ。

そして、ゴリアテはペリシテ人の巨人戦士だが、ダヴィデによって投石器で額を打ち倒され、剣で首を切られる。

この2つの絵画はダヴィデの信仰と勇気の象徴とされている。

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《キリストの捕縛》
バルトロメオ・マンフレーディ(1622)
国立西洋美術館蔵

新約聖書『マタイによる福音書』第26章などに基づき、ゲッセマネの園で祈っていたキリストが、ユダの裏切りにより兵士たちに捕まるシーンだ。

カラヴァッジョの作品に
なんとなく似てると思ったら
カラヴァッジョ派の重要作品のひとつだそう。

どうりでどうりで。

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《スザンナと長老たち》
ジョゼペ・デ・リベーラ(1615)
サンディエゴ美術館蔵

見るからに長老たちの卑猥な視線がスザンヌの裸体に注がれている絵だ。

なんだか今も昔も同じだな。

さてと、続・続 西洋絵画、どこから見るか?につづく。

 

□□□ 東雲乃呟 □□□□□□□

ポール・ケントンを侮るなかれ。