NHKスペシャル『中国人ボスがやってきた~密着 レナウンの400日』

中国資本による日本企業の買収案件が相次ぐ中、昨年5月、かつてのアパレル業界の雄でもあった東証一部上場のレナウンが長年の業績悪化の結果、中国の繊維大手である山東如意科技集団に出資を要請、40億円の資金とともに株式約41%を引き受けてもらうことで、山東如意科技集団の傘下に入ることとなった。中国主導での新たな経営再建はどう進められるのか、NHK取材陣がレナウンの戦いに密着した。


試練はいきなりやってくる。想像もしない中国市場の壁が次々と立ちはだかり、頼みにしていた「日本発ブランド」の神通力も通用しない。市場の状況が目まぐるしく変わる中で、店舗展開の方針自体が二転三転するという想定外の事態に直面。活路を見出そうする日本人社員たち。中国市場で次の一手を模索するため、日本人のこだわりとそのプライドを捨てるしかないのか。これまで日本企業が経験した事のない「中国企業主導の中国進出」。そして、再建の行方はどうなるのか。番組は、その400日にわたる企業ドキュメントである。

冒頭いきなり筆頭株主となった山東如意科技集団の邱亜夫董事長がレナウンの幹部に対して「あなた方に莫大な投資をしたのは中国人の私たちだ。」と思いっきり上から目線な発言をします。つまり、これからは中国人である我々の言うことを聞け!ということです。

この発言は日本の視聴者にかなり物議を醸し出したとは思いますが、邱董事長の真意はなんとなくわかるのですね。実はボクも20年ほど前のバブル華やかしき某繊維商社勤務時代に日本の大手アパレルや大手スーパー向けに大量の中国製衣料を作ってもらってたんですが、その時の日本人バイヤーの中国企業に対する態度は半端なく酷かったんですね。まさに日本人に非ずんば人に非ず。特に酷かったのはダ○エーのバイヤーだったりするんですが、それはもう奴隷を扱うような傲慢な態度でした。

当然、山東如意科技集団の邱董事長も過去に日本人バイヤーからひどい扱いを受けていたことは有り得るわけで、当時の日本のアパレル最大手であったレナウンを傘下にしたことで、長年積もり積もった恨みを晴らしたことが冒頭の発言になったのかもしれません。まあ、そんなわけで冒頭の邱董事長の発言に関してはボク的には過去の経験上苦笑いするしかなかったのです。

さて、話は変わって世界がどんどんグローバル化されてひとつにまとまっていく中にあって、大局的に見れば日本人も中国人もない時代が到来してきてるとは思うんですが、国家間同士のプライドや文化思想の違いがまだ色濃く残ってる過渡期でもあり、あと20年も経ったら、笑い話で済むかもしれませんが、今すぐそう簡単に相互理解し合える状況ではなさそうです。

そんな時代での元王者レナウンの中国企業傘下入りなんですが、ちょっと冷たい言い方かもしれないのですが、既に終わったレナウンなんて煮るなり焼くなりお好きなようにです。今でいうオワコンってやつですから(苦笑)(日本人として多少負け惜しみが入ってることは否めませんが汗)

放送の中にもありましたが、合弁会社である北京レナウン如意が北京の高級百貨店出店に固執するあまり、時間を掛けすぎてていたので、中国側が業を煮やして地方都市である大連に勝手に出店計画を立てます。対して北京レナウン如意の大桐社長は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして一般的に大都市で知名度を上げてから地方都市へ進出するのが一般的であり、ブランドビジネスで地方都市からスタートするなんて有り得ない!と呆れたように言い切るんです。

さて、果たしてそうでしょうか?地方都市からのスタートは必ず失敗するんでしょうか?

ユニクロ、しまむら、ポイント、ハニーズ、西松屋、ヤマダ電機、ニトリ・・・どれも地方出身の勝ち組小売企業ですよね?これらの小売企業は集客力の弱い地方都市からスタートしたことで、必然的に効率的な販売システムが求められることになったのですが、時代に先駆けたマーケティングやMDの理論を独自開発したことで、筋肉質で強靭な企業を作り上げていったわけです。

今や世界中のブランドが北京や上海といった大都市でしのぎを削ってますが、レナウンのような大昔の成功体験を未だに引きずってまったく変化しようとしない図体だけがでかい生真面目な日本のアパレルが中国の大都市で成功するとはとても思えません。

そういうわけでワンマン経営でリーダーシップのある邱董事長に思いっきり扱かれながらも、決して日本人としてのプライドは捨てず、それでいて、日本にしっかりお金が落ちるよう美味しいところは見逃さない臭覚力の高いしたたかなアパレルとして生まれ変わってほしいものです^^

もう一点、番組の中で韓国の巨大アパレルE-Landが紹介されてました。どうやら邱董事長はレナウンをE-Landのようなアパレルに変えたいようでした。E-Landは既に中国で5,000店舗近く展開し、年間1,000店舗増え続けてるそうです。価格帯はレナウンのメインブランドとほとんど変わらず、コートで3万円程度。ユニクロなんかよりはるかに高い価格帯で勝負してるんです。

それを可能にしているのは驚異的なマーケティングとMDの両輪です。マーチャンダイジングは韓国でコントロールするものの、月何千枚もの中国の街角スナップ写真を参考にローカライズしたサンプルを作成し、さらに商品企画検討会では韓国人デザイナー自らが中国人の販売スタッフ十数人の意見を聞きながらサンプルに修正を加えていくわけです。ゆえに、デザイナーに求められる能力はクリエイティブ力ではなく、多くの情報から売れ筋のみを編集するコーティネイターとしての能力なんです。つまり、徹底的に売れ筋のみを追っかけるマーケティング主導型のZARAやH&Mのようなアパレル会社なわけですね。

もちろん日本でも同様の売れ筋追求型アパレルは存在しますが、ここまで徹底して、さらにスピード感があるのは韓国ならではで、日本のアパレルやその他業界の企業も学ぶべき点があるかもしれません。

見逃した方はNHKオンデマンドでどうぞ^^
http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2011032274SC000/

ま、ボクとしてはそんなマーケティングやMDなんかより100年使える高品質で普遍的なデザインの製品をドンドン開発していったほうが何より日本の為になるとは思いますが。詳しくはどうぞ『これが日本の生きる道』をお読みください^^