大杉栄『生の拡充』より
われわれの生の執念深い要請を満足させる、唯一のもっとも有効なる活動として、まずかの征服の事実に対する反逆が現れた。またかの征服の事実から生ずる、そしてわれわれの生の拡充を障礙する、いっさいの事物に対する破壊が現れた。
そして生の拡充の中に生の至上の美を見る僕は、この反逆とこの破壊との中にのみ、今日生の至上の美を見る。征服の事実がその頂上に達した今日においては、階調はもはや美ではない。美はただ乱調にある。階調は偽りである。真はただ乱調にある。
今や生の拡充はただ反逆によってのみ達せられる。新生活の創造、新社会の創造はただ反逆によるのみである。
この知る人ぞ知る名文は、
明治・大正時代、日本を代表する
アナーキスト(無政府主義者)として
知られていた大杉栄(さかえ)が、
評論「征服の事実」の続編として
書いた「生の拡充」の中で
表現した渾身の一説デス。
この大杉栄という革命家は
1923年9月16日の甘粕事件にて
青鞜の2代目編集長だった
内縁の妻・伊藤野枝(28歳)
甥・橘宗一(6歳)とともに
非業の死を遂げるんですが
作家・有島武郎にして
本物のインテリにして
本物の革命家。
真夏の太陽のような男。
出典:華の乱より
作家・江口渙にして
ぼくが会った人物のなかで、
大杉こそが
最も革命家らしい革命家だった。
出典:松岡正剛の千夜千冊より
と、高く評価されたほど。
また、瀬戸内寂聴先生は
自身の著「美は乱調にあり」で
タイトルに引用したほどデス。
この大杉栄の美しい文体は
2つのとても短いエッセイ
「征服の事実」「生の拡充」で
読むことができます。
およそ10分ほどで読めるので
お時間のある時にでもぜひどうぞ。
著作権切れなので
Kindleでも無料で読めますヨ。