コーヒーの忘れられない思い出。
時は学生時代の冬のある日、
例の日立マクセルの工場での
徹夜バイト明けの帰り道、
赤信号で停車していると、
まだ髪の毛があった頃の
松山千春に似たコワモテが
車のバックミラーに映った。
すると、その松山千春似が
眉間にしわを寄せながらも
徐にサーモボトルを取り出し、
カップにコーヒーを
丁寧に注ぎ始めた。
そして、そのコーヒーを
一口ゆっくりと味わった瞬間、
彼の目は静かに閉じられ、
口元になんとも言えない
仄かな笑みが浮かんだのだ。
後にも先にも
彼以上に美味そうに
コーヒーを飲んでいる姿を
未だ見たことがない。
そんな美味いコーヒーを
自宅で作れればと心より思う。