めぐり逢い ー 新島八重回想記。

めぐり逢い 新島八重回想記 鳥越碧

感動の嵐吹き荒れる。


大村益次郎を主人公にした司馬遼太郎先生の名著「花神」に感銘をうけて以来、久しぶりに心打たれる小説に出逢えました。

★★★★★
めぐり逢い 新島八重回想記
著者:鳥越碧

時は密航=即死罪であった幕末の時代。

主人公は同志社大学の前身となる同志社英学校を創設した教育者・新島襄。

譜代3万石の小藩・上州安中藩の一下級藩士であった新島襄は、江戸において西洋の進んだ学術や聖書、ロビンソン・クルーソーを読んだことから、自らの手で日本を欧米諸国に劣らない文明国にしたいというだいそれた大志を抱きます。

そして、1864年、当時幕府監視の目が行き届きにくかった開港地・函館から故坂本龍馬の従弟であった沢辺琢磨ら友人たちの助けを借りて、吉田松陰でさえ成し遂げられなかった米国・ボストンへの密航をたったひとりでやってのけるのデス。

米国密航という新島襄の命懸けの行動力も当時としては画期的なことなのですが、さらに驚かされたのは、一文無しで英語もろくに話せない、しかも病弱で薄汚い身なりの日本人密航者であった新島襄に対して、住居や食べ物、生活費を提供するだけでなく、10年もの長きにわたって中学や高校、大学の授業料までも無償支給してくれたアメリカ人たちの底知れぬ博愛精神デス。

どこか遠くの知らない国から密航してきた一文無しの人間を、自分なら援助してやれるだろうか?友人たちを集ってでも援助してやろうと行動するだろうか?

否、とてもボクにはそんな真似はできない。

「高貴」や「高潔」「気品」「品格」といった言葉がありますが、まさしく新島襄を援助した尊い米国人たちに当たはまるような言葉であると思った次第デス。

これからはとてもアメリカに足を向けて寝られません。

以上、そんな品格ある精神をもった米国人のもとで研鑽を積んだ新島襄の短き半生、出来れば小学生のうちに読んでおけば良かったと激しく後悔デス。

 

□□□ 東雲乃呟 □□□□□□□□□□

美徳以為飾「美徳を以て飾りとせよ」

人間を美しくするのは、見た目の装いではなく、博愛に満ちた行動や精神である。

以上の言葉は、新島襄が生前に遺し、その妻・新島八重が座右の銘とした言葉だそうデス。

資生堂名誉会長・福原義春氏の「私の唯一の財産はエスプリです。」とともに胸に刻んどきたいと思います。