伊集院静の『悩むが花』を読みなはれ。

伊集院静 悩むが花

目茶苦茶おもろい本でござる。


悩むが花悩むが花 ― 大人の人生相談
伊集院 静 (著)

作家の伊集院静と言えば、元々広告代理店の売れっ子ディレクターであったことから、巷では作家以前に人気美人女優の故夏目雅子や篠ひろ子を嫁にしたことでつとに知られるようになった人物であります。特に1970年代後半の人気ドラマ西遊記I&II(1978年-1980年)の三蔵法師役として大ブレイクしながらも急性骨髄性白血病を患い27歳という若さでこの世を去った夏目雅子との悲しい恋物語はいくつかのTV番組でも取り上げられてましたよね。

冒頭画像の「悩むが花」は、そんな数多くの修羅場を経験してきた伊集院静氏が「週刊文春」の誌上で読者から寄せられた仕事、恋愛、家族、生と死などに関する深刻な悩みを伊集院流に一刀両断して回答するという人気連載をまとめた本なのであります。もともと伊集院静さんって職業が作家であるし、落ち着かれた頭良さそうな顔をされてるし、人気女優を嫁にするしで、てっきり相当インテリな方だと思ってたんですが、この著書を読みますと思いっきり漢気溢れる生き様丸出しの豪快なオッサンじゃないですか!

例えば本書にはこんなやりとりがされています・・・・

1.電車で老人に席を譲らないとか、騒ぐ若者に注意したいけど逆切れされないか、という読者(58歳 男 無職)の質問に対しては・・・

「私は注意をする。それは注意せなイカンヨ。問題はその注意の仕方だな。臆病になって注意をしていたら、相手に舐められる。腹の底に力を入れて、コラッ、静かにせんか。と怒鳴るくらいの勢いが大事だ。まあ大声を出さなくてもいいが、肝心は“腹をくくってかかる”ことだ。相手を睨みつけて目線を決して離さない。ひるまぬことだ。

逆切れされたらどうするか?

だから逆切れより、注意するほうがキレてることが必要なんだよ。」と回答して、キレまくることを促進(笑)

2.また最近、年金が破綻するとかで40、50歳の大人が騒いでるがいい加減にしろと言いたい。私は今でも八百屋を経営し、毎朝店頭に立ち、野菜を売って生計を立てている。平均寿命は80にもなるというのに何故みんな早々と働くことを辞めるのか?(72歳 男 自営業)の問いに対しては・・・

「八百屋のオッサン、あんたが正しい。オッサン、立派、大統領!」とのべた褒めの回答(笑)

3.一夜だけお店のフィリピン女性と関係をもってしまいました。先日、本国へ戻った彼女から「妊娠した。責任をとって欲しい。」と連絡がありました。妻にはまだ白状できていません。この場合の男としての身の振り方を教えて下さい(34歳 男 会社員)、との問いに対しては・・・

34歳、会社員よ。パブだか、クラブで、一夜だけ関係を持った女性に子供が出来ただって?一夜だろうが百夜だろうが関係ないだろうよ。フィリピン女性ってなんだよ。フランス人女性じゃ意味合いが変わってくるのかよ?

君ね。フィリピン全国民に失礼だろう。こんなこと質問することじゃないだろう。

男は女をまたいで子供ができたと言われればすべて面倒を見れば、それでいいの。大金を出せって言ってんじゃないぞ。ともかく自分の下半身でやったことは、全身でケアするのは当たり前のことなの。妻に白状するか?その白状って発想が違ってるの。言う必要なんてないって。すぐに認知してやって、仕事が終わった後の夜どこかで働くとか、土、日はアルバイト行くとかして、ドンドン金を送る。イイ思いしたんだから。一晩のことでも半生を使ってやんないと。

「恰好良過ぎません?」

誰だ、今の声は?

作家が恰好つけなきゃ、誰がつけるんだ。

こんな調子で数ある難題?に歯に衣を着せぬ回答でガンガンぶった斬っていくのデス。しかもその達観振りは「お洒落極道」の島地勝彦さんを彷彿とさせてます(笑)いやいやホント楽しい本でございました。2、3時間もあればあっという間に読めますので、ぜひ皆様もお読みくださいませ。「独りで悩んで損した!」と痛感させられるバイブルとなりえる名著かと。