負けて、勝つ 〜戦後を創った男・吉田茂〜。

DVD 負けて、勝つ 〜戦後を創った男・吉田茂〜 shigeru_yoshida_maketekatsu (2)

戦争に負けて 外交に勝った歴史がある。


昭和の三傑 』を読了して以来、
宰相 吉田茂に相当な興味を頂き、

2012年9月に放送された
NHK土曜ドラマスペシャル第11作
負けて、勝つ  〜戦後を創った男・吉田茂〜

同じく2006年8月に放送された
NHK「その時歴史が動いた」
『「日本独立」 その光と影』

以上のNHK2作品を
今更ながら観賞しました。

戦後の日本の復興を支えたのは、
日本人の精神的支柱でもあった
昭和天皇の存在であったことは、
かのマッカーサー元帥も
認めるところでありますが、

DVD 負けて、勝つ 〜戦後を創った男・吉田茂〜 shigeru_yoshida_maketekatsu (1)

その昭和天皇にも負けないほど
戦後日本の復興を支えたのが、
この名宰相 吉田茂であることは
誰しも異論がないところかと。

GHQから繰り出される
理不尽で我儘な要求に対しても
決して臆することなく、
その職を投げ出すこともなく、
日本国民に成り代わって
側近 白洲次郎と二人、
よく耐え抜いたと思った次第。

特にマッカーサー草案が
民政局長 ホイットニーより
突きつけられるシーンは
はらわた煮えくり返るどころか、
僕ならちゃぶ台引っ繰り返しデス。

しかし、吉田首相は、
決して卑屈にならず、
その草案を冷静に読み込み、
米国の言う民主主義の本質を悟り、
また戦力不所持を提案した
幣原前首相と裏で通じていたのか、
冷静に受け入れの判断を下します。

また、ドイツのメルケル首相同様
その堂々とした潔い負けっぷりは、
いつしかかマッカーサーをも
圧倒し懐柔してしまうほど。

1951年1月29日、米特使として
ジョン・フォスター・ダレスが
長期化する朝鮮戦争の打開の為、
日本の再軍備の要求で来日した際、

吉田首相は予めマッカーサーに
再軍備が当時の日本にとって
如何に愚策であるかを切々と訴え、

その結果マッカーサーは、
ダレスに対して、
こんな言葉を言い放って
吉田首相の肩を持ちます。

「自由世界が今日、
日本に求むるものは、
軍事力であってはならない」

その後、自衛隊の前身となる
警察予備隊が組織されるものの
日本を自由主義営に取り込みたい
アメリカの本心を見抜き、
類稀なる外交手腕をもって
寛大な講和条件を引き出します。

そして、ついに1951年9月8日、
サンフランシスコ講和条約を
ソビエト連邦、チェコスロバキア、
ポーランド、中華人民共和国、
中華民国を除く48ヶ国と締結し、
念願であった日本の主権回復が
達成されたのであります。

しかもその条件は、他の敗戦国
イタリアやドイツと比べても
賠償金や分割統治が含まれない
遥かに日本にとって都合のいい
内容の条約でありました。

サンフランシスコ平和会議における
吉田茂総理大臣の受諾演説の全文が
コチラに記載されています。

元々の演説原稿は、
英文で作成されており、
その内容があまりにも
GHQに寄り添った内容だった為、
演説の前日に白洲次郎が
日本語文で書き換えさせたと、
実しやかに言われてますが、

実際は、
吉田首相の英語の発音が
あまりに聴くに堪えないため、
米国のシーボルト大使から
吉田首相の名誉を守る意味で、
日本語での演説を薦められ、
慌てて日本語文を作成したのが
真相だそうデス。

そして、なんとか英文で
読むことを決心していた
吉田首相のメンツを保つため、
白洲次郎がそのような偽情報を
流布させたんだとか(苦笑)

またその演説原稿は、
トイレットペーパーのような
長い巻物であったことから
「吉田のトイレットペーパー」
とも揶揄されていました。

レプリカは武相荘にもありますが、
実物は飯倉の外交史料館
展示されているそうデス。

当時の情勢がよく分かりますので、
ぜひ一度は目を通して下さいませ。

さらに吉田首相は演説の際、
日本で放送されていることを知らず、
出席者に日本語は分からないだろうと、
ところどころの文章を相当割愛して
読んだとも言われています(笑)

そして、さらに同日、
サンフランシスコ市内の
プレシディオ陸軍基地に移動、
日本国とアメリカ合衆国との間の
日本国内への米軍駐留の権利を
与えるなどの内容を盛り込んだ
安全保障条約にも調印しています。

その全文はコチラです。

なお、無理やり吉田に同行した
池田勇人蔵相に対して、
「この条約はあまり評判がよくない。
君の経歴に傷が付くといけないので、
私だけが署名する」と言い、
署名の場に同席することを
許さなかったとも言われています。

この法案に反対する意見に対して
吉田首相はこう言い放ったそうデス。

「番犬を雇ったと思えばいい。」

言いえて妙とはまさにこのこと。

沖縄基地問題、安保法制など
まだまだ数多くの諸問題が
残されたままではありますが、
逆境の中、吉田首相がやり遂げた
狡猾な外交手腕を今一度参考にして、
前に前に進むデス。

DVD 負けて、勝つ 〜戦後を創った男・吉田茂〜 ダレスバッグ shigeru_yoshida_maketekatsu (3)

さて、米特使のジョン・ダレスが、
「負けて、勝つ」のドラマの中で、
かの有名な「ダレスバッグ」を
果たして持って登場するか、
密かに注目をしていましたが、
ご覧の通り見事ダレスバッグを
持って登場してくれました。

やるなNHKデス(笑)

最後に吉田が若き日の田中角栄を
やり込めた良寛の書に纏わる
コチラの逸話をぜひお読み下さい。
吉田茂の人となりが分かる逸話かと。

なお、田中角栄は良寛の書を
吉田への贈り物にする予定ではなく、
観賞してもらうだけに
持参したはずなんですが、

「本物でもおまえが持てば偽物になる。偽物でも俺が持てば本物になるんだよ」

と、吉田に諭され、
まんまと召し上げられたのが
実際の顛末だとか(笑)