伊藤若冲、千載具眼の徒を竢つ天才絵師。

jakuchu_nihon (3) 若冲展 伊藤若冲 東京都美術館

「若冲」を「わかおき」と
読んでことは内緒デス(汗)

※正解は「じゃくちゅう」


かの天才絵師・尾形光琳
58歳でこの世を去った
同じ年の1716年3月1日、

何の因果かその尾形光琳をも
遥かに凌いでいるかもしれない
天才画家がこの世に生を受けた。

その天才画家こそ、、、

伊 藤 若 冲 。

タイトルにもある
「千載具眼の徒を竢つ。」

「遅くとも千年後には、
私の絵を理解してくる人物が
必ず現れるだろう。」

という言葉を残した裏には、
狩野派など主な流派に属さず、
独自の画法を確立した若冲が
他の流派の絵師たちから相当な
やっかみや心無い批判を受け、
当時全く評価されなかったことが
この言葉を若冲が残す
大きな要因になったことは
容易に想像できるだろう。

そして、
その言葉通り
千年も経たない
若冲没後200年後の
ちょうど2000年の節目の年、
京都で開かれた伊藤若冲展にて
その予言通り若冲の名は
日本国中に轟くことになり、

さらに今度は
若冲生誕300年を記念し、
若冲製作史上最高と呼ばれる
逸品ばかりを集めた「若冲展」が
開催されることになり、
名実ともに日本を代表する
絵師として評価されるに至った。

伊藤若冲、
千年先を見据えた天才絵師、
「若冲展」を鑑賞しない理由など
もはや見つからない。

早速、雨降る2016年4月28日、
ボクは東京都美術館に向かった。

なお、実は最も最初に
若冲の実力を見出したのは
米国の日本絵画収集家である
ジョー・プライス氏である。

1953年より若冲の収集を開始し、
1960年代にはコレクション数が
30点程になったというから
草葉の陰で若冲も
さぞ驚いていることだろう。

以上、余計な前置きは終了。
今回、ボクが鑑賞した中で
特に興味をもった若冲の絵を
以下いくつかご覧頂きながら、
その実力を検証したい。

もちろんNHKスペシャル
「若冲 天才絵師の謎に迫る」
からの受け売りだ(笑)

旭日鳳凰図 若冲展 伊藤若冲 東京都美術館

旭日鳳凰図
宮内庁三の丸尚蔵館所蔵

1755年、若冲39歳の頃の作品。

若冲は、30代初めの頃から
絵の勉強を始めた遅咲きの画家。

40歳頃にようやく画家として
本格デビューをするのだが、
まさにその頃の作品と言える。

この画像だけでは
なかなか伝わらないと思うが、
実際に間近で確認すると、
0.2mmほどのとても細かい線が
無数に等間隔で描かれているのだ。

若冲のこの特異な技法の絵は、
「超細密画」と評されるようだが、
描かれいる線があまりに微細な為、
実際に絵を前にして凝視しないと
その凄味は分からない。

若冲の絵は「超細密画」と
評価されるそうだが、
その所以がよく分かる絵と言える。

また、若冲はもともと裕福な
青物問屋を経営していた為、
高級な絹地のキャンパスを
使用することが出来た。

それ故に、その美しい色彩が
未だ色褪せていないことも
幸運だったと言える。

孔雀鳳凰図 若冲展 伊藤若冲 東京都美術館

孔雀鳳凰図
岡田美術館所蔵

広島藩浅野家伝来の絵。
花鳥画の最高傑作とされながら、
戦前より所在不明となっていた
幻の作品である。

2015年夏、岡田美術館が
83年ぶりに都内で発見、
陽の目を見ることになった。

さて、何度も塗り直しが出来る
西洋から始まった油絵と違って、
日本画は水彩画故、一筆入魂、
書き損じは基本的に許されない。

しかし、

それでもミスはつきもの
並の絵師であれば
微細な部分に書き損じを
見つけることができる。

だが、若冲の絵は
並外れた超細密画にも拘わらず
無理に後から直した部分を
見つけることが出来ないのだ。

つまり、物凄い集中力と
忍耐力で0.2mmもの細い線が
描かれているということだ。

しかも細い線が集中する
孔雀の羽の部分などには
輪郭線さえも描かれていない。

神技以外の何物でもない。

雪中錦鶏図 老松白鳳図 紅葉小禽図    動植綵絵三十幅 若冲展 伊藤若冲 東京都美術館

左から
雪中錦鶏図 
老松白鳳図
紅葉小禽図
宮内庁三の丸尚蔵館所蔵

今回の展覧会では、
1757年から1766年まで
若冲40代の頃10年を費やして
制作したとされる
若冲代表作中の代表作
「動植綵絵三十幅」。

もともとは両親と弟、
そして若冲自身の
永代供養を願って相国寺に
寄進することを目的に
描かれた作品なのであるが、

その動植綵絵シリーズ30枚、
全てを一同に鑑賞できた。

その30枚を鑑賞したうち
特に個人的に気になったのが
上にあげた3作品だ。

左の「雪中錦鶏図」は
惚れ惚れするくらい線が細かい。
この絵を模写するだけでも
10年以上掛かりそうな気がする。
それほど微細な絵画なのだ。

中央の「老松白鳳図」は
手塚治虫の火の鳥もびっくりだ。
とにかく白鳳が美しい絵である。

そして、

ハートマークが何気に可愛い。
江戸時代にハートマークが
存在するわけはないだろうから
やはり若冲は千年後の世界が
垣間見えていたのかもしれない。

最後に右の「紅葉小禽図」は
よく見ると、モミジの赤色が
実は全て微妙に異なっている。

同じ赤色を何層にも塗り重ねたり、
「裏採色」といって、
キャンパスの表だけではなく、
裏にも絵を描くことで、、
微妙な色の変化を出しているのだ。

若冲の完璧主義者ぶりには
恐れ入るとしか言いようがない。

以上、この展覧会を見ずして
何を鑑賞すればいいというほど
レベルの高い絵が揃っている。

GW前日、しかも雨の日でも
1時間強並ぶ混雑ぶりであったが、
これほどレベルの高い絵が
鑑賞できるなら全く苦ではない。

若冲の絵の中に
今の日本人に欠けているものが
写っている気がしてならなかった。

そして、

若冲の遺した言葉、
「千載具眼の徒を竢つ。」

今は誰にも理解されなくとも
この言葉の精神を胸に
周りの空気に影響されることなく
自分の信念を最後まで突き通す、

そんなことを伊藤若冲は
一番教えたかったのかもしれない。