大 い な る 陰 謀 (2007)。

大いなる陰謀 2007年 lions for lambs (1)

原題:Lions for Lambs


正義か平和か、
どちらかを選ぶとするなら
私は迷わず正義を選ぶだろう。

If given the choice between
Righteousness and Peace,
I choose Righteousness.

この言葉は冒頭画像の映画
「 大 い な る 陰 謀 」の中で

トム・クルーズが演じる
次期大統領候補と目されていた
共和党のアーヴィング上院議員の
執務室に飾られていた言葉である。

アメリカ合衆国第26代大統領の
セルドア・ルーズベルトが
遺した言葉として知られている。

セルドア・ルーズベルトと言えば
その渾名であった「テディ」が
テディベアの名前の由来となった
ことでも知られた大統領であるが、
実際は軍人出身の強力なリーダー
シップを備えた大統領であった。

さらに付け加えると、
ルーズベルトという名前は
ニューディール政策で知られ、
太平洋戦争中に亡くなられた
フランクリン・ルーズベルトが
馴染み深いかもしれないが、

セルドア・ルーズベルトは
1898年の米西戦争の英雄として
米国史上唯一軍事上最高位の
勲章が授与された軍人である。

その栄誉もあってか、
キーストーンのラシュモア山に
彫られた4人の大統領のうちの
1人としてよく知られた存在だ。

そんなセルドアが遺した言葉、

正義か平和か、
どちらかを選ぶとするなら
私は迷わず正義を選ぶだろう。

良いか悪いかは別にして
今もアメリカの根幹に根付いている
価値観と言っていいだろう。

本作においても
アンドリュー・ガーフィールド
演じる今風の学生トッドは
巧みに操られた世間の仕組みを
知れば知るほど勉学への熱意を失い、

大人たちが勝手に始めた戦争、
だから俺たちには関係がない、
戦争が好きな政治家たちが
勝手にやればいいじゃないか、
という御託を並べるが、

ロバート・レッドフォード演じる
スティーヴン・マレー教授から
名も知らぬ兵士達の犠牲のお陰で
お前たちは自由に暮らせてるんだ、
という今まで目を背けていた事実を
胸をえぐるように突きつけられ、
その自己矛盾にトッドは苦悩する。

もちろん日本も同様だ。
そのセルドアのいう正義の上、
つまりはアメリカの犠牲の上、
さらには沖縄の犠牲の上に
今までの日本の平和があった、
といっても過言ではないだろう。

だからと言って、
本作の監督も兼任する
ロバート・レッドフォードは
米国の戦争が正義であるとは
少しも描こうとはしていない、
また結論も一切語られていない。

しかし、

今の日本にも蔓延している
「臭いモノには蓋をしろ。」、
ことなかれ主義的な思想への
痛烈なアンチテーゼが込められた
作品と言えるのではないだろうか。

「無知」と「無関心」こそ
悪魔が最も好む人間の業である。

by 東雲乃風