雲居にまがふトレンチコート。

春は曙、否、白コート。


わたの原 漕ぎ出でて見れば ひさかたの
雲居にまがふ 沖つ白波

法性寺入道前関白太政大臣

季節外れの寒さに
震えながら耐えていた
桜の花がついに散った。

その代わりにと
この季節に現れるのが
白いトレンチコート

この季節は膝上のショート丈が良い。

 

□□□ 東雲乃本 □□□□□□□□□□

★★★★☆
なぎさホテル
著者:伊集院静

伊集院静氏が1978年冬から1984年にかけて7年あまり過ごした逗子のなぎさホテルでの出来事を書いた自伝的随想。

 

1978年冬、自ら招いた種で家族と離別することになった著者は、膨大な借金を抱えながら仕事も住むところさえも失ってしまう。

仕方なく10年過ごした東京を離れ、防府にあった実家に帰る決心をする。しかし、その帰省途中どうしても関東の海を一度見ておきたくなった著者は汽車を途中下車し、導かれるように逗子の街に寄る。

その逗子の街での運命的な出会いの末に辿り着いたのがタイトルにもなった「なぎさホテル」だ。

著者はこのホテルの支配人ならびにスタッフの7年にもわたる好意によって、自堕落的だった生活に終止符を打ち、見事作家として生きる道を見つける。

 

お金や社会的地位に頼らない「信用」って大事だよね。

でも、どうすればその「信用」とやらを身に着けられるのか。

その辺のヒントが本書には隠されていると思う。