板垣退助と白洲次郎が愛したルイ・ヴィトン。

麹町 展示会場 空へ、海へ、彼方へ──旅するルイ・ヴィトン 展示会  louis_vuitton_heritage_savoir_faire_tokyo_expo_volez_voguez_voyagez (1)

2016年5月12日(木)14:00~16:00
空へ、海へ、彼方へ──旅するルイ・ヴィトン
入場料:無料


ファッション業界の多方面より
「ヴィトン凄すぎる!」との
歓声にも近い声があがっていた
ルイ・ヴィトンのアーカイブ展、

漸く鑑賞出来る機会をえたので、
それ相当の時間をかけてでも
今日はとことん紹介させて頂きたい。

まず冒頭画像がその展覧会場。

無料で鑑賞できるにしては
相当気合の入ったエントランス。

これはちょっと期待できるかも?
と、この時点でハイテンション。

展覧会場 地図 空へ、海へ、彼方へ──旅するルイ・ヴィトン louis_vuitton_heritage_savoir_faire_tokyo_expo_volez_voguez_voyagez_map

その前に展覧会場の場所を
まずはご紹介しておこう。

会場場所は意外にも麹町で、
紀尾井町パークビルの近くだ。

元々この会場のあった場所には
タイムスの巨大駐車場が
存在していたはずなのだが、
今回のアーカイブ展の為に
簡易の建物をルイ・ヴィトンが
わざわざ建てたのかもしれない。

そうであれば驚くべきことだが。

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さ、早速会場内へ入ってみよう。

なお、会場入り口には、
クロークがあるので、
大きな荷物があれば預けたい。

創業者:Louis Vuitton ルイ・ヴィトン 空へ、海へ、彼方へ──旅するルイ・ヴィトン louis_vuitton_heritage_savoir_faire_tokyo_expo_volez_voguez_voyagez (29)

まず目の前に現れるのは、
創業者ルイ・ヴィトンの肖像画。

ルイの若かりし頃の絵だ。

ルイの生存期間は以下の通り、
1821年8月4日 – 1892年2月28日、
西郷隆盛より7歳年上になる。

因みに創業者ルイの生い立ちは
コチラをぜひ参照されたし。

もともとルイ・ヴィトンは
スイスとの国境に近い
ジュラ山脈麓のアンシェイ村の
粉屋の家に生まれたのだが、

養母と折り合わなかった為、
家を出てパリに住みつき、
荷造り用木箱製造兼荷造り職人の
見習いからスタートしている。

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ヴィトンの原点となったのが
実はこの木製のトランクだ。

なんてことのないトランクだが、
実は当時のトランクは蓋の部分が
ドーム状に丸くなっているのが
一般的なデザインだった。

しかし、ヴィトンのトランクは
蓋部分を平べったくしたことで
活路を見出したのだった。

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昔のトランクはこんなふうだ。

宝物が入ってる木箱と言えば
だいたいこんな形の木箱を
思い浮かべるのではないだろうか。

蓋が丸くなっていると
トランクをいくつも重ねて
載せることが出来ないので、
とても都合が悪かった。

そこで、ルイ・ヴィトンは
デザインよりも機能性を重視し、
蓋を平べったくしたことで、
それが大当たりしたというわけだ。

因みにトランクの表面は
重たくなる本革を使わずに
防水加工を施した
ご覧のグレーのコットン素材
「グリ・トリアノン・キャンバス」
を張っていた。

それ故、トランクの軽さでも
評判を生んだそうだ。

なお、モノグラム素材に関しては
2代目のジョルジュ・ヴィトンの
登場を待たねばならない。

さ、先へと足を進めよう。

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最初の大きな部屋がコチラ。

ルイ・ヴィトンの原点となる
年代物の製作道具や写真などが
これでもかと展示されている。

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これが当時の製作道具だ。

単なる道具ではあるが、
どれもデザインは凝っていて
さすがおフランスではなかろうか。

カーブひとつをとっても
美しい流線型が描かれている。

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ルイ・ヴィトンのトランクは
こんな専用車で配達されたそう。

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ルイ・ヴィトンの社員たち。

皆の身なりが統一されており、
一体感と勢いを感じることが出来る。

さ、次の部屋へ。

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す、す、す、凄い!

代表的なアーカイブがずらり。

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よくぞこんな古い製品たちを
捨てることなくアーカイブとして
保管していたものだと思う。

しかも著名人が使用していた
アイテムも数多く混じっている。

きっと多額のコストを掛けて
集めたにモノに違いないが、
過去のアーカイブがどれほど
貴重な宣伝材料になるかを
認識していないと出来ない業だ。

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著名人たちからの特別注文も
数多く受けていたのだろう。

見るからにオーダーメイドな
トランクが数多く展示されている。

さ、次の部屋へ。

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砂漠旅行のコーナー。

この部屋でも
スタイルの違うトランクが
展示されていて大賑わいだ。

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砂漠でも大丈夫なように
密閉仕様になってるんだろうか?

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砂漠旅行の向かいにある
船旅のコーナー。

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トランクやバッグだけでなく、
洋服も数多く展示されている。

イニシャルが記載された
古びたバッグが印象的だ。

さ、次の部屋へ。

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この辺になると、
凄い!凄い!凄い!という
言葉しかもはや思いつかない。

しかも使用者の写真付きだ。
否、広告写真かもしれないが。

現代のSNS時代ならまだしも
大昔にこれだけ数多くの
完璧なアーカイブを収集するのは
奇跡に近い作業かと。

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ヴィトンのゴーグル!?

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左手前は香水瓶。

奥はカンティーヌカーキット?
それって一体何だろ?

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このピクニックセットだけで
100万円は下らないだろう。

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紅茶キットかな?

それともコーヒーキット?

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続いては飛行機の部屋へ。

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かの島時勝彦先生が
パリ発NY行きの
人生初めて超音速旅客機
コンコルドに搭乗した際、

パリ本店で購入したばかりの
ヴィトンの最新型バッグ、
それがバゲージクレームから
誇らしげに出てくる姿を
妄想してほくそ笑んでたそうだが、

実際バゲージクレームから出てくる
数多くの年代モノのヴィトンを見て、
自分の新しいヴィトンを恥ずかしく
感じてしまったいう逸話がある。

ヴィトンのバッグはエルメス同様、
先代より継承されてこそ
価値が増していくものなのだ。

新しいヴィトンなど
単なる見栄の道具にしかならない。

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汽車旅行の部屋。

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ゴージャスとしか。。。

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そこにはありえない世界が。

一生に一度、
鉄道旅行はしてみたいと思うが
それはないな、きっと(涙)

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もはや何の部屋かも
分からなくなってきたような。

但し、

モノグラム柄が布張りされた
ゴージャスな壁面に唖然。

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グレインレザーのケース「グリモワール」。

身だしなみキットのことだろか?

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村上隆とのコラボ部屋。

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秀逸なデザインだと思う。

よくぞ村上隆の才能を見出し、
ここまで開花させたなあと。

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また凄いトランクが登場!

これらは3代目となった
ガストン・ルイ・ヴィトンが
個人的に集めたコレクション。

故にヴィトンの製品ではない。

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スタッズトランク。

一体いくらするんだろ???

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ガストン-ルイ・ヴィトンは
日本の刀剣の鍔(ツバ)や
家紋の入った櫃や宝箱なども
コレクションしてたそうだ。

以前、コチラでモノグラム柄は
1870年頃から欧州でブームになった
「ジャポニスム」の影響を受けて、
日本の家紋からインスパイアされた、
と書いているが、

本展覧会のコメントでも
家紋から影響を受けたことが
事実であるように説明されている。

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まだまだ部屋は続くが
この辺で体力的に厳しいものが。

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クリスチャン・ディオールや
ポール・ポワレなど、
ファッション界の巨星たちが
オーダーメイドしたラゲージたち。

食い入るように見る
女性の皆さんは元気だわ(苦笑)

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現代のクリエーションの部屋。

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ミュージック関連の展示。

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さ、いよいよ和の部屋へ。

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ご存じ草間彌生コラボバッグ。

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レイエ・キャンバスの
「スティーマー・トランク」
所蔵:自由民権記念館

1883年、板垣退助が所有した。
シリアルナンバー:7720

因みに同じ土佐の後藤象二郎も
1883年1月に所有しており、
シリアルナンバーは7708と
板垣のそれより少し古い。

そして、日本人で最も最初に
ルイ・ヴィトンを所有したのは
西郷隆盛の従弟・大山巌。

ヴィトンの1882年の顧客名簿に
自筆のサインが残っているそうだが、
何を購入したのかは不明である。

また日本に現存する
最も古いルイ・ヴィトンは
関西大学の前身である
関西法律学校の初代校長を務めた
小倉久が1884年にパリ本店で
購入した1872年製のトランクだとか。
価格は1800フランだったらしい。

このように今も顧客名簿が
残っていることに驚かされる。

※シリアルナンバーは
後藤のもののほうが古いが
先に購入したのは板垣だそう。
板垣は1883年1月9日、
後藤は1883年1月30日。
詳しくはコチラ。

元薩摩藩士でフランス公使の
「鮫島尚信」とみられる
購入記録もあるそうだが、
大山巌とどっちが古いのだろ?

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モノグラム・キャンバスの
トランク「ビステン」と
「スティーマー・バッグ」

1967年、白洲次郎が所有。

普段は武相荘に展示されてる。

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そして、クラフトマンの部屋。

ここが最後の部屋だ。

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実際の職人さんたちが来日し、
目の前で職人技を披露してくれる。
なんとも見応えのある企画だ。

以上、如何感じられたであろうか?

とにかく展覧会自体は
みんなが言っていた凄すぎるの
遥か5倍以上の凄さで、
ため息と驚嘆の連続攻撃、
もはやこの展覧会を観ずして
ルイ・ヴィトンは語れないほど
充実したコンテンツであった。

それに加えて、

ブランドを成立させるには
長い歴史だけでは不十分で、
それを証明するだけの
質の高いレガシーも合わせて
アーカイブにして遺しておく、
これに尽きるんだなと痛感した。

業界関係者は言うに及ばず、
他の業界であろうとなかろうと
確実に鑑賞しておくべき
本物の展覧会だと思う。

もうこんなチャンスは
パリのルイ・ヴィトン財団美術館
にでも訪問しない限り
二度と訪れないのだから。

開館時間:
2016年4月23日(土)-2016年6月19日(日)
午前10時-午後8時(最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(5/9, 5/16, 5/23, 5/30, 6/6)
※ただし4/25, 5/2, 6/13の3日間のみ午後1時より開館

観覧所要時間:約2時間