カラヴァッジョ展 バロック絵画の祖と呼ばれた男。

『バッカス』(1595年頃)『果物籠を持つ少年』(1593年 - 1594年) カラヴァッジョ展 ルネサンスを超えた漢。バロック絵画の祖。 Michelangelo Merisi da Caravaggio (2)

左:『果物籠を持つ少年』
右:『バッカス』


2016年5月10日(火)12:30~14:30
「カラヴァッジョ展」~ルネサンスを超えた男。

「バロック絵画の祖」とも呼ばる近世のイタリアが生んだ俊傑の画家ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ(Michelangelo Merisi da Caravaggio、1571年9月28日 – 1610年7月18日z)、及びそのカラヴァッジョの画法に影響を受けた画家たち・通称カラヴァジェスキたちの作品が公開された「カラヴァッジョ展」を鑑賞してきた。

何しろ、このカラヴァッジョ、ボクの知るところでも、敬愛する島地勝彦先生、パリマッチ誌のフランス人記者相手に「私の唯一の財産はエスプリです。」の絢爛華麗なコメントを返した資生堂名誉会長福原義春先生、斬首された首に自分の自画像を描き込んだカラヴァッジョの「ダビデとゴリアテ」に衝撃を受けて、グラフィックデザイナーから画家に転向した横尾忠則先生、また「ローマ人の物語」で人気の作家 塩野七生先生方らをこぞって虜にしていることから、先日鑑賞した「若冲展」同様に鑑賞しない理由などどこにも見つからない。必ず鑑賞せねばならない展覧会だった。

但し、画家は長寿という言われに反して、カラヴァッジョは顔料に含まれていた鉛中毒のため38歳の若さで亡くなっている。その為、カラヴァッジョの作品は世界中に80点ほどしか遺されていない。しかもそのうちの60点ほどは教会の祭壇画や壁画なので展覧会に出品することはそもそも不可能。よって残りの約20点のうちから厳選された11点だけが今回の「カラヴァッジョ展」に出品されていると理解したい。そして、残りの40数点はカラヴァッジョの画法を模倣し継承したカラヴァジェスキたちが描いた作品であることも予め頭にいれておきたい。

そして、本展覧会はテーマが非常にうまくカテゴライズされており、美術音痴のボクでさえも十分理解できる内容になっている。作品の中で描かれているファッションを見ているだけでも楽しめるのではないか。時間がなくともぜひ鑑賞いただきたいと思う。なお、11点すべての作品をご紹介したいところだが、この記事では特に気になった以下1点だけをご紹介したい。

エマオの晩餐 カラヴァッジョ展 ルネサンスを超えた漢。バロック絵画の祖。 Michelangelo Merisi da Caravaggio_Emmaus

■ エマオの晩餐
1606年、油彩/カンヴァス、ミラノ、ブレラ絵画館

宗教画「エマオの晩餐」は、カラヴァッジョが25歳頃と35歳頃の2度同じシーンを描いているのだが、これは晩年に当たる35歳頃の作品に当たる。「エマオ」とはエルサレムから11km離れたところにある街なのだが、イエスの弟子だったクレオパらがエマオの街を旅をしていた時に、偶然緑の服を着た男に声を掛けられる。そして、仲良くなったクレオパたちはその緑の服を着た男を食事に誘うのだが、その食事時の光景を描いた作品が「エマオの晩餐」だそう。因みにこのシーンの後、その緑の男が感謝してパンを裂いた瞬間に、クレオパたちはその緑色の服を着た男こそが実は復活したイエスであることを悟るのだが、時既に遅し、その瞬間にイエスは消えてしまったと伝わる。

なお、この作品が描かれた時期に曰くがある。もともとカラヴァッジョは喧嘩早い性格だったらしく、例えば街の食堂でウェイターに「このパスタにはバターとオリーブ油のどっちが使われてるんだ?」と質問をし、ウェイターが「匂いを嗅げば分かりますよ。」と生返事しただけで大喧嘩になるほどだった。そんな短気な性格も手伝って、ローマでラヌッチオ・トマゾーニという若者を誤ってナイフで刺し殺してしまい、その足でカラヴァッジョはローマから逃亡、その逃走中に描かれたのがこの「エマオの晩餐」とされている。そのことが影響してかどうかは分からないが、もともとカラヴァッジョは光と陰部分にメリハリを効かせ、強い光で人物が闇から浮き彫りでるような作風が特徴であったのだが、この作品以降、逆に深い闇に人物たちが沈んでいくかのような表現に作風が変化している。

カラヴァッジョ展 ルネサンスを超えた漢。バロック絵画の祖。 Michelangelo Merisi da Caravaggio

さて、本展覧会を鑑賞して大変興味深いことを思いついた。パブロ・ピカソやサルバドール・ダリ、日本人画家で言えば村上隆といった現代の画家が、何故あれほど一般人には理解されにくい個性的な絵を描いているのか、もしくはその個性的な絵が何故評論家やコレクターたちには認められるのか、その理由が分かったような気がした。

あくまでも素人の戯れのような一考察であるのだが、もはや現代においてはどの作風も無数に作られた過去の作品の模倣でしかなく、あくまで時代を超越するオリジナリティを求めるのであれば、常人には思いもつかない奇想天外な作風を追い求めるしかないのではないかと。東京オリンピックのエンブレム問題でもそうだったが、完全にオリジナルなデザインのエンブレムを発想するのは今や至難の業である。そう考えるとピカソやダリ、村上隆らの奇想天外で唯一無な画法が認められても何らおかしくないのかもしれない。

芸術の分野に拘わらず、千載具眼の徒を竢つ、そのくらいの心意気がこれからは必要なのだろう。

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ Bild-Ottavio_Leoni,_Caravaggio

カラヴァッジョ肖像画

日伊国交樹立150周年記念
カラヴァッジョ展
CARAVAGGIO and His Time: Friends, Rivals and Enemies

会期:
2016年3月1日[火]~6月12日[日]

会場:
国立西洋美術館[東京・上野公園]
〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7
http://www.nmwa.go.jp